『クラゲの骨塚』表紙制作工程

 こんにちはこんばんは、朝香です。

今回は『クラゲの骨塚』の表紙を使った制作工程のまとめです。
どの表紙でもだいたい作り方は同じ流れでおこないます。

流れとしては大まかに5つあり

  1. 【構図】【色】【加工方法や紙】のうちどれをしたいか選ぶ
  2. ラフ(アナログ)
  3. 下書きとタイトル(以下すべてデジタル)
  4. 線画
  5. 着色
という感じです。

*【構図】【色】【加工方法や紙】のうちどれをしたいか選ぶ

「表紙デザインを考える流れ」で書いたように、「表紙を作りたい」となった際まず使用したい構図、色、加工方法や紙のうち、いまもっともしたいことを第一に考え制作します。

なので正直、内容とあまり雰囲気が合ってないこともあると思います。しかし構いません。「この表紙を使って本を出したい!」が本を作るうえでのかなり大きな原動力になるので、個人的には気に入った表紙を作れるかどうかが最重要です。


『クラゲの骨塚』では「構図」から選んで制作しています。水中っぽいイメージ。


*ラフ*

私は基本的に、どんな些細な落書きでもまずアナログで描かないと絵が描けない人間なので、ラフは必ずアナログでおこないます。本文のネームやラフもアナログです。


ひえ〜〜めちゃくちゃでもうしわけない。ですがだいたいどれを作るときもこんな感じで、あとで繋げればいいと思っているのでそのとき描きやすいように描きます。

ネームやラフ、下書きなどアナログ作業の際使用している大きめのクラフト紙スケッチブックがあるので、それになんでも描いていきます。自由帳です。
思いついたメモや筆慣らし、なんか右上にバター100gとかアーモンドとか書いてますがこれはべつに関係ないです。ザ・自由帳

いま見返すとラフの段階では水中というより雲っぽいですね。デジタル作業に移行後かなり変更しました。

本編に拾陸號の頃の門の話が出てくるので、表紙の中でその要素を取り入れようとしているのがうかがえます。
あとこの頃はまだ魚とか魚群とかいう文字が出ているので、クラゲと確定していないようです。一番大事な部分が決まる前から表紙を…?

*下書きとタイトル*

ラフをスマホで撮影し、画像をメール添付で自分宛てに飛ばし、PCで開いて〜という方法でラフを取り込んでいます。ネームも同じです。めちゃくちゃ無駄な手間かかってると思いますが、もうこれで慣れてるのでずっとこのままです。

それをクリスタにもっていき、下書き開始です。


下書き完成図。

このときはまだ裏表紙の拾陸號門が完成したものに比べアップになっています。
アップだとなんかちょっとよくわからないというか、ちがうな…となりあとでもっと引きの絵に変更しました。

下書きに使う色はオレンジと水色が多いです。まずオレンジ、次に別の要素を描くため色を変えるとなったら水色、またさらに別の要素ならマゼンタっぽいピンク…という感じです。

タイトルロゴについて

下書きのあと、もしくはそれの前にタイトルロゴ(と表紙に載せるすべての文字データ)を考えます。
この作業がなかなか苦手で時間をくうので、これを決定させてからでないと安心できないため早めに考えます。

オリジナルなロゴデザインを考えたり作字をしたいとは思いつつ得意ではない&今回はほぼ打ちっぱなしそのままでしっくりきたのでこのような感じになりました。

『卒哭忌モラトリアム』や『間の狂言』はベースに既存のフォントを使い、それを拡大縮小や足したり引いたりこねくりまわして制作しました。


*線画*



人物の線画とクラゲの線画の完成図です。
拾陸號の門にちょっと下がっていただきました。

クラゲはそのほうが描きやすかったので黒地に白で描いています。あとでこの上に色をのせました。


*着色*

歴代表紙を見ていただけるとわかると思いますが、私は肌を塗って髪を塗って服を塗って背景塗って〜といったタイプの色塗りがめちゃくちゃ苦手です。めっっっちゃくちゃ苦手です。なのでできるだけ避けています。どうしてものときはなんとかしますが、なんとかなりません。吐きそう。

という理由と、ベース+差し色や2〜3、4色という少ない色数のデザインが好きなのでそういう感じのデザインを考えることが多いです。

今回の表紙の色をどうするか考えたとき、たしか参考資料として保存していた中に黒地にレインボーっぽい色で生き物がたくさん描かれた絵があったな…というのを思い出し、今回はそれベースでいってみようということになりました。

人物はグレスケ、色はクラゲのみレインボーっぽい色で。



クラゲにはこの線画の上に着色レイヤーを2枚重ねています。
1枚目は通常レイヤー、2枚目はその上に透明度85%にさげた紫色のスクリーンレイヤーです。
レインボーっぽい色の塗り方を検索し、とりあえずさまざまな色を乗せてきとうに試し、レイヤーを左右に動かしながら気に入った色味のところでとめて…という試行錯誤の産物です。



最終的にクラゲと重ねたときのものがこちら。
水色と紫ベースの色に落ち着きました。


このあとはグレスケで塗った人物とクラゲと文字データをすべて表示させて完成ですが、この水の揺らぎ具合をどれくらいにするか途中悩んでいた痕跡があったのでそちらものせます。



ちょっとしたアハ体験。
画像1枚目が下書きに近く、描いてるうちに「ちょっと白が多いな…」となり狭めました。
画像1枚目の門の下のほうがなんか汚いですね。なんでしょうね。最終的に2枚目で落ち着きました。


*完成*


もう何度も載せていますが、最終的な完成図がこちら。
水泡とキラキラをイメージしてスパッタリングを散らしました。

用紙はグリッターペーパーオーロラという、ミランダよりラメ感が強い紙です。
濃い色の部分はラメ感が弱まります。今回大部分が黒ベタということもあり、黒部分のラメ感はゼロです。
ですが今回はそれがよかった!ギンギラギンになりすぎず、でも白、人物、クラゲ、文字のところにラメが残りちょうどいいキラキラ具合になりました。
あえて濃い色で塗りつぶしラメ感を抑え、それを生かしたデザインを考えるのもよいと思います。

いま手持ちのラメ感のある紙では、グリッターペーパーオーロラ>ミランダ>キュリアスIRホワイトの順でグリッター感が強いです。
グリッターペーパーオーロラはオレンジと緑っぽいグリッターがよく見えます。それに比べるとミランダとキュリアスIRホワイトは控えめというか上品な感じです。

実際印刷するとかなり印象もちがってくると思うので、やっぱり紙見本を見るか実際に印刷を試すかしないとわかりませんね。紙見本はね、なんぼあってもええですから…。

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表紙制作の主な流れは以上です。

今回のこの表紙に関しては比較的すんなり色もロゴも決まりましたが、今やってる8月用の原稿の表紙はそのへんかなり難産でした。


とりあえずいまのところはこれが気に入ったのでこれでいくか…と落ち着いたところです。色で10テイクくらいしました。

タイトルロゴに関しては手書きの日本語にしようと思いいくつか書いたりしましたが、もう自分の文字やフォントの組み合わせでもぜんっっっぜんうまいこといかず挫折。
日本語のローマ字表記でしっくりきたのでとりあえずこれでいく予定です。
読み方はそのまま日本語で「石に梅咲く」です。

全然関係ないですがみなさんのタイトルの決め方についても知りたいし、自分のもいつか書き記しておきたいですね。書き記す?歴史資料か?


この表紙は使いたい「構図」と「加工」を先に決めてから絵のデザインをおこしました。
こういう枠っぽい感じで…あとタイトル箔押しで…。箔の色も金にするかカッパーにするかどうするかで悩み…などなど。でも箔押ししたことないのでそろそろ、そろそろやってみたいです。

箔押し、本当はクラゲの骨塚でする予定でした。が、これ箔押しじゃないほうが可読性高いし合うな…?と思いやめました。白箔とかならよかったかもしれませんが、それだと表紙のラメ感に負けそうだし、銀だと可読性が悪そうだし、むしろ白が一番いいなと。なんでも箔押しすればいいというものではたぶんない。たぶん。いやそれはなにごともそう。適したデザインを考えるのはとてもむずかしいですね…。


私は本を作る際「このネタで本作りたい!」となったら本文の前に表紙を考えます。
そして暫定表紙を完成させてから本文作業に入ります。なので表紙はできたけどプロットができていないというのがほぼほぼ。

基本的にプロット(セリフ、流れ)→大まかなコマ割り(ネームのネーム)→ネーム兼下書き→コマ割り→吹き出しと写植→ペン入れ…の順で本文作業をしているので、そのプロットよりも先に表紙を完成させています。

締切前の修羅場のときにまだ表紙が完成していない状態で本文作業をするのが不安で不安で…あと「気に入ったこの表紙で本を作りたい」「この表紙の本をこの世に生み出しておきたい」が大きな原動力になるので、表紙ができているほうが意地になれていいです。

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いつのまにか別の表紙の話になってしまったのでそろそろ終わります!

ちなみに今回の表紙の本はまだ在庫があるため通販をおこなっております。8月のイベントにも既刊として持ち込み予定です。
表紙用紙の紙見本や疑似小口染めの見本としてだけでも、よろしければご活用ください。


それでは、ここまでお読みくださった方々、誠にありがとうございました!

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